京都大学農学研究科附属農場

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研究活動

研究内容の紹介

教授 北島 宣

カンキツの無核性に関する研究

カンキツは世界最大の果樹産業であり、無核(種なし)性は重要な育種目標の一つです。安定した無核果実は、雌性不稔性や種子の早期発育停止の形質に起因しますが、我が国在来の有核の紀州ミカン(’平紀州’など)の変異系統である’無核紀州’は早い時期に胚が発育を停止して、すべての種子が発達しない(Aタイプ種子)ことが明らかとなりました。’無核紀州’をマンダリンと交配するとその後代に無核と有核が1:1に出現し、ブンタンと交配すると3:1に出現することが知られており、無核性カンキツ新品種育成のために盛んに利用されています。本研究は、’無核紀州’およびその後代の無核品種・系統の無核性発現について、胚の早期発育停止が何に起因しているかを明らかにするため、形態形成に関する組織学的な調査や遺伝子の発現解析を行っています。さらに、交配した個体が有核か無核かを判別するには5年以上かかるので、芽生え植物の段階で判別できる技術を開発しています。

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カンキツ果実の離脱現象の解明

カンキツでは、梅雨時期に果実が落果する生理落果が安定生産を阻害する一因となっており、生理落果は光合成産物の果実への転流量の低下に起因していると考えられています。生理落果による果実の離脱現象は、果実への光合成産物の転流量が低下する誘導段階、離脱が不可逆となる決定段階、果実が離脱に至る実行段階の過程で進行すると考えられ、離脱は果梗と果実の境にある離層組織の崩壊によって完了します。本研究は、果実離脱を制御するための技術開発の基礎として、決定段階から実行段階に至るプロセスを解明することを目的に、離層形態の組織学的調査とマイクロアレイを用いた遺伝子発現解析を行っています。

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カンキツの起源と種分化に関する研究

カンキツ類は東アジア原産で、カンキツ属、キンカン属、カラタチ属があり、カンキツ属は200種近くに分類されています。これらは属間や種間雑種が比較的容易に形成されるため、カンキツは多様性に富んでおり、これらの類縁関係はよくわかっていません。このカンキツ属、キンカン属、カラタチ属の起源がどこにあり、カンキツ属ではどのようにして種が分化してきたかは興味ある点で、栽培や文化など、人々との関わりの歴史を考える上でも明らかにしたいところです。カンキツは古くから人々に利用されており、最も古い中国のカンキツ栽培の歴史は3000年以上と考えられています。本研究では、カンキツの起源と種分化を明らかにするため、中国、タイ、ベトナムなどで現地調査を行い、現地における在来カンキツの形質に関する特性調査やDNA解析を行っています。

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カンキツの遺伝資源収集・育成と育種に関する研究

東アジアには多様なカンキツの在来品種がありますが、近年、商品性の高い限られた品種への転換が急速に進んでおり、貴重な遺伝資源が消失することが危惧されます。日本においても、食味は劣るものの、無核性が付与された系統、自家不和合性が打破された系統、減酸が著しく早い系統など、有用な形質を有するカンキツが存在しています。本研究は、これら東アジアおよび日本各地に存在する貴重なカンキツ遺伝資源を収集・育成するとともに、有用形質の発現機構の解明と遺伝様式を調査して、育種への利用を行っています。

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果樹類の染色体に関する研究

染色体にはその生物の来歴や形質に関わる多くの情報が刻み込まれていますが、多くの果樹類では染色体のサイズが小さく、個々の染色体の識別が困難なので、染色体の解析に関する研究はほとんど行われていませんでした。しかし、近年では果樹類においてDNA解析に基づく遺伝子の連鎖地図が作られるようになり、染色体解析の重要性が一段と増してきました。本研究は、カンキツ類やサクラ属などの果樹類について、個々の染色体を識別するために、蛍光染色法や染色体DNAを特異的に検出して可視化する手法などを検討しています。現在、ウンシュウミカンでは18本の染色体を識別する手法が確立できましたので、連鎖地図との対応関係を明らかにする必要があります。

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カキの生産性に関する研究

カキ果実の市場価格は他の果樹類に比べてやや劣るものの、生産コストが低いことから、カキ栽培は収益性が高いことが知られています。これまで、剪定量や・EEEEEE・ハ数が収量に及ぼす影響や摘蕾が果実肥大を促進することなどが明らかにされていますが、収量が多くなると販売単価が安い小さな果実が多くなり、収益が少なくなります。本研究は、附属農場植栽のカキ樹を用い、市場出荷した収穫果実の粗収入を指標として、適正な剪定量や摘蕾・摘果程度などを明らかにするとともに、粗収入に及ぼす要因解析を行って、カキの栽培の実際に即した、生産者に有用な高収益生産モデルを構築しています。

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カキの品種分化に関する研究

カキは中国湖北省原産とされており、日本では約1000の在来品種があります。カキは食用だけではなく、柿渋や木工製品などの生活資材としても古くから利用されており、里山の風景や日本文化と深く関わっています。カキ果実の形や大きさ、甘・渋性、二重柿性、座の有無などの形質は品種によってバラエティーに富んでおり、頼山陽が愛でた伊丹市の旧岡田家に伝わる’菊平’は二重柿性と座の形質を共に持った特徴的な果実です。このような特徴的な形質をもつ品種をキーにカキ品種の分化や来歴を調査しています。

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果樹類の高品質果実安定生産に関する研究

果樹栽培では、大果で糖度が高い高品質果実を安定して生産することが強く望まれています。しかし、露地栽培において果実品質は降雨や日照などの環境要因に強く影響され、果実発育期の乾燥は果実肥大を抑制し、成熟期の降雨は糖度の低下を招くので、安定した高品質果実生産は困難です。本研究は果樹類の露地栽培において、雨水は流入しないが土壌水分は蒸散する被覆資材でマルチングを行い、点滴灌水装置を用いて土壌水分を調節することにより、安定した高品質果実生産の実用技術を開発するものです。現在、モモとカキについて高品質果実生産のために有効な灌水時期と灌水量について調査を行っています。

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准教授 中﨑 鉄也

四倍体コムギ品種の保有する有用遺伝子の探索と育種利用

我々の研究拠点である附属農場では京都大学のブランドビールの原料である古代コムギ品種‘エンマーコムギ’および‘ピラミダーレコムギ’の種子生産を行っています。それらの開花特性・ノついて解析を行ったところ開花特性を支配する未知の有用遺伝子が存在することが判明しました。現在、それら遺伝子の作用についての詳細な解析を進めるとともに、分子遺伝学的手法を駆使してそれら遺伝子の同定・単離を進めています。また、この研究過程で、これら品種を用いることによってコムギ粒の品質向上に直接関与する形質についての解析できることが明らかになってきていて、開花特性以外の形質について解析を進めています。さらに、エンマーコムギ’や‘ピラミダーレコムギ’が含まれる四倍体コムギのグループには解析が進んでいない品種群が多数存在することから、多様な四倍体コムギ品種に研究対象を広げて、開花特性に関連する形質を中心に、コムギ育種に貢献できる遺伝子の研究を展開しています。

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イネ品種が保有する新規の除草剤抵抗性遺伝子を利用したGM作物育成の可能性の検証

農業生産現場では、除草剤耐性雑草の侵入が大きな問題となっています。除草剤耐性雑草は、除草剤に抵抗性を示す雑草のことで、抵抗性には、除草剤が標的とする酵素タンパク質をコードする遺伝子に突然変異が生じることによって獲得された抵抗性(target site resistance)と標的部位の変異によらない抵抗性(non-target site resistance)が知られています。後者は、植物体が自身に有害な未知の化学物質に対して解毒作用を示すかの如く、多様な除草剤に抵抗性を示すことから、植物が備えている未知の代謝機構の存在を示唆しています。私たちは、水田雑草であるヒエのnon-target site resistanceに関する研究の過程で、イネにおいてもnon-target site resistanceを発現する遺伝子が存在することをみいだし、その遺伝子の単離、機能解析を進めています。この遺伝子は、日常食べているお米にも含まれているものであることから、遺伝子組換え操作の際の選抜マーカー遺伝子としてこれまでにない好都合な遺伝子素材です。そこで、受け入れ可能な遺伝子組換え作物(GM作物)育成手法の開発の観点、あるいは、近年注目されているNBT(New plant breeding techniques)との関わりでの利用の観点から研究を発展させていこうとしています。

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リン酸肥料の投入量の縮減を可能とするイネ遺伝子の探索と機能解析

植物の三大栄養素の一つであるリンは核酸・E生体膜・ATPなどの主要成分であり、植物体内で重要な役割を担っています。しかし、施肥されたリン酸肥料のほとんどは、すぐに土壌中の金属イオンや有機物と結合して植物が利用できない不可給態となって固定されてしまいます。そのため植物が吸収する以上にリン酸肥料を施肥する必要がありますが、リン酸肥料の原料であるリン鉱石は今後十数年で枯渇すると言われており、年々価格が高騰しています。したがって、土壌中のリンの利用効率を高めることが重要になります。リンの利用効率に関連する酵素として不可給態の有機態リンを可給化する機能をもつ酸性ホスファターゼ(Acid Phosphatase: APase)が知られています。この遺伝子は、イネにおいては、30以上の遺伝子座が存在しますが、その詳細な機能については明らかにされていません。そこで、私たちは、APaseやその関連遺伝子について、リンの利用効率に対する効果を検証する研究を行っています。また、同時に、mPingという活性型のトランスポゾンの転移によってAPaseの転写活性が上昇する変異体の作出を進めていて、遺伝子の機能解析のみならず、新たな有用遺伝子の創出を目指した研究を展開しています。

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助教 齊藤 大樹

イネ出穂期突然変異系統を用いた新規出穂期遺伝子の大規模探索

イネの開花期(出穂期)は生産性・収量性に関わる重要形質の一つです。イネは短日植物であることから、短日条件で出穂が促進し、長日条件で遅延します。しかし、このような出穂期制御メカニズムは明らかになっていません。そこで、遺伝子レベルで出穂期制御メカニズムを解明することを目的として、突然変異により出穂期が変化した系統を作出し、その原因遺伝子を特定するとともに、出穂期制御遺伝子間ネットワークの構築を目指しています。これまでに一部系統について、原因遺伝子の特定が完了しています。まだ解析の終わっていない系統が200系統以上あるので、新たな出穂期遺伝子が特定できる可能性があります。さらにこれら変異系統を交雑し、これまでにない新たな出穂特性をもつ品種を育成中です。

<キーワード: イネ、出穂期、遺伝子、突然変異、遺伝子間ネットワーク、育種>

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近縁交雑集団(japonica x japonica)を利用した農業有用形質の遺伝解析

ゲノム(DNA)配列の違いに基づくDNAマーカーを利用した選抜法は、近年重要な育種手法の一つとなっています。しかし、DNA配列の違いが少ない近縁な品種間の選抜では利用できる既存のDNAマーカーが少ないので、DNAマーカーを利用した選抜法が利用できません。新たに開発したmPing-SCARマーカーはイネ品種銀坊主に特化したオーダーメードDNAマーカーで、銀坊主と近縁品種を区別することのできる新規DNAマーカーです。この研究テーマは、mPing-SCARマーカーを用いてこれまで解析が困難であった銀坊主と近縁品種との交雑集団における農業有用形質に関わる遺伝子を特定します。

<キーワード: DNAマーカー、mPing-SCAR、近縁交雑集団、マッピング、量的形質、オーダーメード、イネ品種銀坊主>

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トランスポゾンmPingによる大規模Tag-lineの育成Knock-outおよびGain of function変異の作出

トランスポゾンはゲノム内を移動するDNA配列単位で、自身の配列を切り出し、あるいは複製しゲノム上の別の領域に挿入することで自身の配列を転移させます。トランスポゾンが遺伝子内部に挿入された場合、その遺伝子の機能を破壊し、一方転写調節領域やイントロン領域に挿入した場合、その遺伝子の発現を変化させることが分かっています。トランスポゾンは通常そのような転移が起きないように不活化されていますが、トランスポゾンmPingは自然条件下でも頻繁に転移する性質をもっています。この研究テーマではその特性利用し、mPingが転移した系統を大規模に育成し、人為的な遺伝子機能破壊系統(Knock-out line)あるいは遺伝子機能獲得系統(Gain-of-function line)の作出を試み、遺伝子の機能改変により新たな有用系統の育成を行います。

<キーワード:トランスポゾン、mPing、転写調節、遺伝子機能破壊系統、遺伝子機能獲得系統>

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遺伝子発現制御因子とそれらの制御下にある発現遺伝子ネットワークの網羅的解析

生命現象の多くは単一の遺伝子発現によるものではなく、多くの遺伝子発現ネットワークによって制御されています。トランスポゾン内部には遺伝子が発現するための転写調節因子が多数存在し、同一のトランスポゾンが複数の遺伝子の転写調節領域に挿入されると、これら遺伝子は共通の発現プロファイルをもち、複数の遺伝子による新たな共発現遺伝子ネットワークが構築される可能性があります。このような仮説は進化の原動力の一つとして考えられてきましたが、これまでこのことを証明した研究はありません。この研究テーマでは、コンピューター解析を中心としたバイオインフォマティクス手法により、共発現遺伝子ネットワークを形成する遺伝子群を特定し、それらの転写調節領域内のトランスポゾンの存在を見出します。また、逆説的に共通のトランスポ・]ンが転写調節領域に挿入した遺伝子群を特定し、これら遺伝子群に共発現ネットワークが存在するか否か解析します。この研究テーマは共発現ネットワークの構築という進化の基盤的生命現象を解き明かすだけでなく、進化という何万、何億年という長い期間を通じて過去に起こった現象をリアルタイムで再現する世界初の試みです。

<キーワード: トランスポゾン、共発現ネットワーク、進化、転写調節領域、転写調節因子>

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助教 滝澤 理仁

単為結果性トマトにおける種子形成抑制機構の解明

単為結果性遺伝子pat-2を持つトマトでは、受粉・受精なしに果実の着果および肥大が起こります。そのため、通常のトマトの施設栽培で必要とされる人為的な受粉や植物ホルモン処理を省略でき、非単為結果性トマトに比べより省力的な栽培を行うことが出来ます。また、単為結果性トマトでは、果実の着果および肥大が花粉の稔性に依存しないため、花粉に悪影響を与える高温や低温のような不良環境条件下でも、生産性の高い栽培が可能です。しかし、これら単為結果性トマトでは種子形成が阻害され、このことが単為結果性トマトの種子生産や育種を妨げています。そこで本研究室では、組織観察などにより単為結果性トマトの種子形成阻害を誘導する要因の解明を試みています。

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単為結果性トマトを利用した低投入型栽培体系の確立

日本におけるトマト消費は生食が中心で周年生産されています。一般のトマト品種では、果実が肥大するために受粉・受精が必要ですが、この過程は高温や低温、寡日照などの環境ストレスに弱く、冬期には暖房が必要になり、夏には着果数の減少や肥大不足が起こって生産性が低下する問題が起きています。遺伝的な単為結果性系統では、果実肥大に受精を要しないので、低温や高温などの不良環境下でも着果・肥大し、結実の・タ定化、可食部の割合の上昇、人工授粉や訪花昆虫の管理などの作業の不要化などの有用性があります。私たちは、単為結果性遺伝子pat-2を導入した栄養系品種’MPK-1’(京てまり)を用いて収量と品質を向上させる栽培方法について検討しています。さらに異なる交配組み合わせから選抜した果実形質や草姿の・ルなる単為結果性系統を維持しており、これらの様々な遺伝的背景を持つ系統の特性を明らかにし、その知見をもとに、苗の増殖から果実生産までを含めた単為結果性品種による低コスト栽培体系を確立しようとしています。

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助教 河井 崇

バラ科サクラ属果樹におけるリンゴ小球形潜在ウイルスベクターの利用

ウイルスベクターは、遺伝子操作で目的とする遺伝子を組み込んだ組み換えウイルスを作製し、直接植物体に感染させることで遺伝子の発現あるいは抑制を行う技術です。多くの時間や労力を要する従来の形質転換法と比較して、ウイルスベクターは短期間で簡易に遺伝子の発現・抑制を行うことができ、遺伝子の機能評価から有用物質の生産まで幅広い分野で利用されています。特に多くの種や品種で安定した形質転換法が確立されていない果樹類において、同技術の適用意義は大きいといえます。これまで感染性や病徴発症などの問題から果樹類で安定して利用可能なウイルスベクターは開発されていませんでしたが、近年、リンゴ小球形潜在ウイルス (apple latent spherical virus; ALSV) ベクターがリンゴやナシを含む幅広い植物種に無病徴で感染し、安定して遺伝子の発現・抑制が可能であるということが報告されました。リンゴやナシでは実際にALSVベクターを用いた遺伝子機能評価が行われているほか、花成関連遺伝子の発現・抑制による早期開花誘導にも成功しています。また、ウリ科植物の病原ウイルスに対・キ・驛EイルスワクチンとしてALSVベクターを利用し、複数の病原ウイルスの感染抑制に成功した事例も報告されています。このようにALSVベクターは、これまでウイルスベクターの利用が困難だった様々な果樹類において、分子遺伝学的な基礎研究から農学的応用まで幅広い用途での利用が期待されます。そこで本研究では、ウメ、モモ、アンズ、アーモンドなど商業的に重要な果樹種を含むバラ科サクラ属果樹 (Prunus spp.) を対象に、リンゴ小球形潜在ウイルスベクターの利用性の検証を行っています。

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